雲ノ平と笠ヶ岳

<しっとりとした雲ノ平>
毎年この季節に組んでいる雲ノ平ツアー。ここ数年は7月20日ごろも雨が多く、高山植物が一番綺麗な時に合わせたツアー設定も、なかなか功を奏しません。今年はいかに。
 初日7月20日は曇りベースの小雨でしたが、二日目は日差しこそ夏のそれでは無かったのですが穏やかな天気で、お客様には雲ノ平を満喫していただけました。三日目四日目は生憎の雨模様。これも山、頑張って歩き通していただきました。
「雲ノ平に来るのが夢だったの」とおっしゃるお客様の笑顔に救われた山行でした。
 いつもなら夏山本番を迎えてテンションも上がりつつある山小屋スタッフなのですが、今年は悪天続きで客足も伸びず、加えてヘリコプターでの物資輸送も予定通りには捗らず、スロースタートな感じでした。雨がよく降ったせいか、黒部源流域の雪解けは例年より早く進んでいて、残雪も少なめ。高山植物の開花も早めのような印象を受けました。

<笠新道を登る>

下山して、プライベートガイドのお客様と平湯で合流。来月ヨーロッパアルプスの名峰に登頂予定のお客様で、トレーニングを兼ねて負荷の高いコースを希望されていました。選んだのは笠新道。翌日、新穂高を5時に出発。笠新道に取り付いてからは、標高差100m30分を目安にペースを維持しつつ、小刻みに休憩を入れながら、無事に標高差1400mを登りきりました。取り付きから山荘まで9時間半ほどかかりました。歩き通せるのか不安を訴えていらしたお客様も、意外とすんなり登れたことに喜んでいらっしゃいました。薄曇りで日差しが弱く気温もそう高くなかったのも良かったのでしょう。
翌早朝は、ご来光を拝み、明けてゆく槍穂高の峰々を写真に収めました。他の登山者が全て出発してからゆっくりとスタート。お客様には、意外と変化に富んだ笠ヶ岳の稜線歩きを満喫していただきました。
 2泊目は双六小屋。二日前に泊まったので受付で「お帰りなさい」と歓迎の言葉。早めに休んで翌日に備えました。

<雲海、滝雲、陰影礼賛>

 三日目は西鎌尾根から槍ヶ岳、大喰岳と歩いて南岳小屋までの予定。あさ4時前に小屋を出発して樅沢岳山頂で日の出を待ちました。ガスが切れると、槍穂高の稜線がまるで天空に浮かぶ城のように降臨しました。言葉がありません。
 そのうち西鎌尾根に滝雲がかかり、そこへ昇ったばかりの太陽から放たれた朝の光が差し込んできました。グラデーション、陰影、光芒、、、、。夢中にシャッターを切りながら、果たしてこれを写真に収めることができるのだろうか、こんな情景は機械では記録できない、と思えてきます。
  
 一ヶ月ほど前に歩いた西鎌尾根は雪解け直後でしたが、今やお花が満開です。ミネウスユキソウ、イワオウギ、ウサギギク、ミヤマシシウド、コバイケイソウ、タカネスミレ、ミヤマオダマキ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲなどが咲き誇っていました。
 千丈乗越まで来るとガスに囲まれてしまいました。お客様と相談の上、台風接近との予報もあり、ここで下山ルートへ進むことに。そうとなれば、一気に新穂高温泉登山口まで下ってしまおうという事に。

<登山のマナー>
 
けっきょく二泊三日で40キロ歩いた今回の山行。予定より短いながら濃い三日間となりました。
 ところで、西鎌尾根で遭遇した人間のウンチの数々。展望台になった箇所や、登山道のすぐ脇に、使用済みの白い紙とともに放置されていました。
 「キジ撃ち」、「お花摘み」は、その言葉のように、排泄行為をそのように見做す事で、「奥ゆかしさ」を表現したものだと思います。やむを得ず事をする場合は、それなりのマナーや気遣いがあって然るべきでしょう。少なくとも、使用済みの紙は持ち帰ろうよ。人工物の紙は自然に帰らないよ。高山ではバクテリアの働きが少ないので、ウンチも分解してくれないよ。
 かくいう私も、山中で用を足したことはあります。また今回は、放置された他人の使用済みの紙を拾って帰ったわけではありません。しかし、人の振り見て我が振り直せであり、山中で見つけたゴミは拾って帰るように、心がけようとに決めたのでした。山は私の職場であり、動植物へのローインパクトを心がけていかなければ、未来はありません。