季節のせめぎ合い
「例年」という言葉が当てはまらないのがこの頃の気候でしょうか。予報では雪マークが点いたり消えたりしている北アルプスも、いざ登ってみると朝晩こそ冷え込んできたものの、紅葉もまだまだで、日中は稜線でも汗ばむような陽気です。

三連休に予定していた立山大日三山縦走ツアーは、台風の影響が懸念されやむなく中止にしてしまいました。お申し込みいただいていたお客様にはたいへん申し訳ありませんでした。
初日から雨、早朝には立山山頂で雪もちらつき、また最終日は風速20m以上の強風予報でした。この予報通りなら、この季節の3000mクラスの山に登れる状況ではありませんから、即中止なのですが、ここのところ大気の状態は寒気と暖気のせめぎ合いで予測不可能な面もあり、北アルプス北部はその境界線上。結果、天気の崩れが小さい事もあり得ます。

さて蓋を開けてみると、三連休初日は曇り、二日目も雨は降らず穏やかな天気で、これなら実施できたかもしれないと思いましたが、三日目は予報通りの強風で稜線では立っていられないほどだったそうです。ツアー登山という性格上、お客様の最大の安全を考えると、中止もやむなしだったか、と思っています。

その後、週末に穂高のガイドが入っていた事もあり、立山から転戦して穂高へ。ガイド山行の前にトレーニングと撮影を兼ねてジャンダルムへ。西穂山荘を早朝4時半に出発して奥穂高岳を目指しました。平日だというのに山荘は結構な混みようで、北アルプス最難関と言われる奥穂へのルートへ向かう人も我々を含めて10名ほどはいたでしょうか。撮影しながらで、ジャンダルムに立ったのは午後2時でしたのでかなりゆっくりなペースでしたが無事歩き通す事が出来ました。穂高岳山荘もかなりの混みようでした。

翌日は奥穂高に登りかえして吊尾根から岳沢へ。途中、撮影隊に遭遇しました。昨年不慮の事故死で亡くなった穂高岳山荘の小屋番、宮田八郎さんを追悼する番組を作っているとの事。撮影の合間に八郎さんの奥様と少しお話しできました。「たまたま今だけここにいない、そういう気がするんですよね」奥様のその言葉をすぐ近くで八郎さんが聞いているような気がしました。

西穂から奥穂、奥穂から前穂、多くの単独の方が歩いていらっしゃいました。ご高齢の方も多く、怪我をされて血を流している方にも会いました。初見なのか、細かいルートミスをされている人も多く、気が付いた時はなるべくさり気なくご注意差し上げるのですが、ルートを外して、ほんの数メートルですが不安定な岩場を無理やり下っている様子を見ると、いつ事故が起きても不思議ではないと思いました。

これからいよいよ秋山シーズンですが、北アルプスの稜線は一夜にして雪化粧する事も。十分な装備、体力、余裕のある日程でお出かけください。