<山の天気は行ってみなければ判らない>
モンベルアウトドアチャレンジMOCとPeak2Peak写真山岳ガイド事務所との提携イベント、「残雪の八方尾根フォトトレッキング2days」は、毎年4月初旬の週末に開催しているツアーで、ガイドさせてもらっている。唐松岳には登らず、八方池あたりまで歩いて後立山の美しい風景を朝な夕なに撮影しようという企画。今年2021年は4月3、4日の開催だった。

一週間前の天気予報では、撮影には不向きな天気予報だった。北アルプスは前線の通過で荒れ模様というので、ツアーが無事開催できるかどうか。なにせ、八方スキー場のゴンドラとリフトが動かなければ、宿泊場所である八方池山荘へ上がることもできない。「八方スキー場あるある」の強風でリフトが止まるなんてことはしょっちゅうだから、心配だった。

プロのガイドになってから、天気の良し悪し(による山行の実施、中止)が収入の直結するので、毎日四六時中天気予報が気になるようになった。もちろん、安全管理の面でも、天候要素は重要だ。気象のプロでは無いけれど、持てる知識と情報と最近ではアプリを最大限に活用して、当該山域の天候がどのように変化する可能性があるのか、山行一週間前から直前まで、高層天気図や各予報会社の予報を細かくチェックするのが日課である。

天気予報は、日本列島全体で見ると、精度はかなり上がっていると思う。寒気や暖気の流れ込みなどのベースになる気象の変化、低気圧、前線の移動速度や経路を把握することで、本州中部山岳地帯の天候の全体像を把握することは、難しいことではない。しかし、例えば週末の1泊2日で山行を組んだ場合、大きくは天気が下り坂であるとき、2日目の登頂のタイミングの時点で雨や雪になるかどうか、細かいことは直前にならないと予想が難しい。また山岳地帯は地形による空気の流れ、太陽が当たる斜面とそうでない斜面の違いなど、局所的な気象があるため、ピンポイントで天気を予想することはプロでも難しい。
できれば、せっかく予定を組んでくださったお客様には、少しでも条件が良い状態で登頂の時間と可能性があれば、それを追求したい。しかし、現地に行ってみて、悪天候で全く登れなかった、ということもありうる。

登山の世界では昔から「観天望気」が必要と言われてきたが、現場にいて目の前の空の様子から天気の変化を読み取ることは、テクノロジーが発達した現代でも、大切な事だ。その場所にいることで得られる情報は、気象衛星から送られてく情報と同じくらい、役に立つ。だから山の天気は行って見なければ判らない。

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<少ないチャンスをものにする>
ツアーの初日はまあまあの天気で、スキー場のゴンドラとリフトも無事に動いてくれたので、14時半ごろに八方池山荘に上がることができた。荷物を一旦部屋に置いてから、撮影装備を持って外に出た。朝から唐松岳に登った人たちが続々と降りてくるのとすれ違いながら、八方池まで上がった。

太陽は傾き始めていて、山に差し込む光はだんだんと斜光線になる時刻。陰影が浮かび上がり、千切れ雲の隙間から差し込む光が、複雑な地形を描き出す。参加者の皆さんには、無積雪期には立ち入ることができない場所まで散策してもらいながら、思い思いの場所で撮影しいただいた。

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日没と日の出の前後の時間帯は、太陽の光が斜めに差し込んでくる=斜光線になるので、被写体=山岳の風景を立体的に陰影をつけて描き出してくれる。そして刻一刻と光が変化する。
夜には天気が少し荒れた。翌朝、3時半に起きて山荘の外へ出て様子を伺った。天気予報では午前中に雨が降り出すことになっていた。ガスって何も見えないが、天頂には時々星が見え隠れする。高度を上げるとガスの上に出るかもしれないと判断し、山荘から少し高度を上げた地点まで行ってみることにした。

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午前5時10分。振り返ると唐松岳山頂を目指すツアーパーティーがヘッドライトを灯して登ってくるのが見えた。山荘はガスの切れ間に見え隠れし、雲海に高妻山から頸城山塊が浮かんでいた。中層と低層の雲の間がスリット状に割れて、光が差し込んでいる。素晴らしい光景だった。
思い思いの場所で三脚を立てて撮影に入った。
5時26分。東の空に浮かぶ雲の底が突然茜色に染まった。
5時34分。太陽が姿を見せた。雲底が茜色に染まっていた時間は、7分あまり。その間、目を転じると五竜遠見尾根がモルゲンロートに染まっている。

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山でお待ちしております。

<終わり>